小沢くんは相変わらず
びっくりするくらい小沢健二のままだった。
小沢くんは私の2番目の王子さま(大倉くんは5番目)で、
大学生の頃『犬は吠えるがキャラバンは進む』というアルバムについて10枚くらいレポートを書いたことがある。
先生の評価は「なんかわからないけど聴きたくなる」だった。
今思い出しても最高の褒め言葉だ。
『ラブリー』や『今夜はブギーバック』が売れて、いつの間にか姿を見なくなったが、
『LIFE』は未だに何回も聴く。
人生で一番再生回数の多いCDかもしれない。
今週の火曜の朝、
ZIPをつけたら小沢健二19年ぶりにシングル発売!と言っていて、
ふーんと思いつつ朝日新聞を広げたら文字の全面広告。
ものすごく嬉しかった、活動をぼつぼつ始めていたのは知ってたけど
HPを読み込むほどではなかったから。
仕事帰りにおらが町に一軒しかないCD屋に寄ったが発売日厳守だと言われて、前金に全額支払って帰る。
水曜。
紙ジャケでか!と思いながら受け取る。
我が家はもうロクなCD再生機器がなく、ブルーレイレコーダーに、テレビにイヤホン突っ込んでというお粗末な装備で臨んだ。
正直一度聴いただけではよくわからなかった。
iPhoneで聴きたいのでCDレコを発注。
金曜。
朝起きて一番にしたのはMステとZEROの予約。
ようやく車のプレイヤーにCDを突っ込む。
2曲めのが好きだな〜と思いながら、
あーもうこのままドライブいきてーなーと思いながら出勤。
帰り道、夕暮れの渋滞の中で『流動体について』を聴いていたら唐突に思い出した。
高校生の頃、
ウォークマンでフリッパーズギターを聴きながらチャリでえんえん坂道を登ってた頃のことを。
あの頃も人生は不条理だと思っていたが、
あの頃の倍の人生を生きても
やっぱり私の人生はままならなくて
思い通りにいくことなんて何ひとつない。
ちょっと泣いた。
でもそのあと猛ダッシュで家事を済ませて(我が家は金曜の夜が1週間で一番忙しい)
Mステはリアタイ。
19年ぶりにTVで見る小沢くんは
ほおのあたりがふっくらお年を召していたけど
アカデミックなたたずまいが濃くなって
ますます素敵なおじさんになっていた。
パフォーマンスを食い入るように見る。
歌詞は難解になっていて(私の中では村上春樹と同じくらい難解)、
でもメロディは切なくストリングスの調べは美しく、
声はぜんぜん変わっていなかった。
そのあとのZEROも良かった、
しっかり目を見て自分の言葉でお話しされていて
村尾さんがべた褒めしていた。
私があの頃の倍の人生を生きて
ままならないなりにいろんな知恵を身につけ家族を作っている間に、
彼もまた進化し続けていた。
そういう当たり前のことをかみしめた贅沢な週だった。
『だけど意思は言葉を変え
言葉は都市を変えてゆく』
胸に刻もうと思う。